音楽とコラボレーションする企画は、今始まったわけではない。 ダンスやドラマでも自然なコラボレーションになっている。

 落語とコラボレーションする企画がある。最初は異質なようで戸惑った人もいただろう。落語はひとりで表現する語りの世界で、そこに音も伴っているかからだ。音楽も芸人の仕草で感じる、と言われても不思議でない総合芸術でもある。

 そこにジャズとのセッションや打楽器や室内楽の人びとが加わると舞台芸術が変わって見えてくる。

 即興で落語と対峙するひともいれば、演目に会わせて五線紙に書き込んで合わせて表現するひとたちもいる。書いて事前に用意してあると、それはドラマの「劇判」と同じで、背景や感情をデフォルメすることになる。何の不自然もスリルもないコラボレーションだ。

 即興で対応するひとのなかには、お互いに息を合わせて、或いは様子を見ながら合わせていくこともある。みんな優しい思いやりがあっていいのだろう。

 劇判になるなら音楽をステージで一緒に演ずる必要は無いだろう。そして即興なら、話芸に切り込んで対話できる鋭さがあった方が面白いだろう。同じ舞台芸術でも「異種格闘伎」は、あそびとは違う創造と破壊があっていい。様子を見ながらのごまかしはお互いの芸術が停滞してしまうだろう、と私は思ってきた。ところが私の考えが吹き飛ぶように、お客さんは喜んで満足して帰る人が多いようだ。社会には新たな領域の「音楽落語」が浸透しているのかもしれない。