同じ楽器編成。ここでは3〜4名の楽器アンサンブル。同じ場所で同じマイクを立てて、同じ条件での録音を順番に三人が挑戦した・・・録音した音楽を聴いてみた。これが三者三様で全然違った音楽録音になっていた。
 エコーやフィルターなどのお化粧をしないスッピンのママの音楽だが、録音した人の個性がしっかり残っていた。ひとりはシャリシャリした少しやせた音になり、もう一人はアンサンブルを生で聴いたママの響きがして、最後の人は高音や低音がふんわり伸びて行く感じで録音されていた。
 基は顔の輪郭だ。いくら化粧をしても輪郭は変わらない。三者はそれぞれプロだから、後は企画や作曲などの制作者や聴き手の好みとなる。

 私たちが携帯の簡易録音機材で同じ素材を録音しても、微妙に違って録れている。録る人の目(心)が何処にあるかで、変わってくるようだ。
 今までで一番驚いた録音は、フランス国籍(現・日本在住)のプロデューサーが「秩父夜祭」を録音して、日本の文化をヨーロッパの放送局で発表した作品を聴いた時だった・・・普通日本人が見聞する音ではない、竹が山車の車と軋み合った音の上で屋台囃子が鳴っている音風景だった。

 私の録音時のリズム隊はドラムスのキック(バスドラ)のつくりで決まった。録音技師の腕が一番だが、キックを固めの音につくり、それに太鼓類を順次重ね、ベースと合わせ、ギター・ピアノと加えて行くサウンドづくりだった。