「座・高円寺」という劇場は、東京杉並・ JR中央線「高円寺」駅傍にある。演劇・ダンスを中心に優れた舞台芸術の公演・創造・発信事業を展開していて、「高円寺の阿波踊り」の拠点にもなり、地域に根ざした文化事業を展開している素晴らしいシアターだ。

 その劇場で毎年12月になると「ピアノと物語」という魅力的な企画が公演されている。一つはショパンのお話・ピアノ作品の演奏が組み合わされた朗読劇「ジョルジュ」。もう一つはガーシュインのお話し・ピアノによる同種の「アメリカン・ラプソディ」だ。作=斎藤 憐、演出=佐藤 信。

 作曲家の物語の展開に合わせて作品が演奏される。演劇のステージと音楽会を一晩同時に舞台に乗せた企画だ。それも超一流のピアニストが演奏し、実力派俳優が演じるのだから、凄まじいステージになっている。

 前年はガーシュイン役のピアニスト「佐藤允彦」氏の演奏と共にタイムマシンに乗ったので、今回は「関口昌平」氏のショパンを楽しんだ。氏は第15回ショパン国際ピアノコンクール入賞者で、凄まじいショパン芸術を表現していた。豪快な骨太い音楽づくりと繊細な響きや歌は、満席の観客を感動の渦に巻き込んでいった。沢山の人びとのショパン芸術を聴いてきた私だが、芸術をも越えた心の芯を揺さぶられた氏の演奏に、言葉にならない深い感動を覚えた。

 ジョルジュ役の竹下景子、ミッシュル役の植本純米の俳優諸氏も凄い。

 毎年「第九」のように楽しみにしている人びとが増えて来たようだ。この企画も地域に根付くように思った。飛行機に乗って来て楽しんでみたいひとでも、納得の二時間半に心から震えるはずだ。