長いこと生きていると、多くの人びととの出会いと別れがある。そして、誰にも知られないうちに亡くなったひともいる。
樋口 昭(元埼玉大学教授)先生は「私が作曲家になりたい」という時、ゼロから教えてくれた恩人だった。そのご両親にも私はお世話になったが、随分前に亡くなられていた。樋口先生は独身のママ暮らしておられたので「孤独死」だった。どうやら通常の葬儀も行われず今日まで来てしまったようなので、私は近々追悼音楽葬をお寺で、演奏家と私と二三名の参加者で菩提を弔いたいと思っている。

恩師や先輩諸氏の訃報に触れる機会が多くなった。悲しいことだが、若くして亡くなられるひとの訃報は辛いものがある・・・末期癌だと本人も承知していた。でも演奏会の本番はキリッとした名演で、誰もピアニストの彼女が病身だとは知らなかった。
三月の紀尾井ホールでの私たちの演奏会から一ヶ月後に亡くなられた。プロの生き様だと思った。「飛澤直子」さん、のご冥福を祈っているところだ。