邦楽器のアンサンブルと、ミュージカル、物語が加わったステージを時々拝見することがあった。企画・制作・演出に、出演者の誰もが「子どものために」一生懸命な成果を披露している。

 その大人たちだって子ども時代があったはずだから、子どもが何を理解して、楽しみにするかは承知のはずだ。

 ところがステージをつくる大人たちは、子ども時代を、子どもの感性を忘れたような、自分たちが信じる「優れた芸術を提供」していると思われる上から目線のプログラムになっていることが多く、今更ながら驚かされてしまう。

 邦楽の場合、どこまでもお師匠さんと弟子であって、音楽を楽しむ友だちではないのが不思議だ。そして「いいことをしている」という自負心が残るから、この種のプログラムは半世紀も進歩がない。

 方楽器の演奏に合わせてダンスとミュージカルの歌声やセリフなど、異種格闘技のようなステージが悪いのではない。いいものを集めたらいいものになるという安易な制作が問題なのだ。こどもがふくらませる世界と遊離していることへのチェックがないことが問題なのだ。そしてこの感覚はまだまだ続いていく。