音楽の醍醐味と無常の新世界は「即興」にあります。
即興はデタラメではありません。ルールにのっとった表現で、音楽の様ざまな表現を可能にさせています。民族音楽にもあるし、クラシック音楽にはその時代の名手(作曲家やピアニスト)が表現して時代を創ってきていますが、楽譜の残されているものはごく僅かですから実態がなかなか分からないかも知れません。そして何といってもジャズが凄いし、今でも音楽が一番生かされているのはそのジャンルかも知れません。
’60年代に現代音楽でも、即興演奏団体があった。東京芸大の楽理科出身の作曲家・演奏家が集まって演奏した「グループ音楽」がそれでした。「現代音楽でも即興があるんだ」と私は大いに影響を受けました。
’70年に拙作「クリエーション」シリーズを発表しました。ほとんどルールを記した楽譜であり、即興が柱になっていました。
トロンボーン・アンサンブルの「第一番」は、一つのフレーズを、相手や仲間が真似する、反抗する、対話し合う、等の連続で音楽が進んで行きました。それは鳥獣戯画のような音で面白いし、演奏家の個性が表に出ていて、音の海で聞き手は楽しく揺られる面白さがあしました。しかし私と演奏をした仲間以外、誰もいいとは言いませんでした。
もっと即興表現が広がるように、と図形や注釈表を増やして、他のアンサンブルや合唱にも拡げたが、発展はしませんでした。その原点を大切にした段階で、本当は作曲家として失敗の道を歩み始めたのかも知れないと思っています。