‘90年代後半、東京文化会館の館長に作曲家の故・三善 晃先生が就任された。

 市民参加企画や市民文化育成事業が公立文化施設で開花していく時代だった。「ちょっと手伝ってよ」と三善先生に誘われ、次世代育成企画など話し合っていた。その頃から若い演奏家のための国際コンクールを三善先生が提案され、実現へ向けた努力をされていた・・・それから四半世紀が経ち、21年1月11日に同館大ホールで「第18回 東京音楽コンクール 優勝者&最高位入賞者コンサート」が開催された。コンクールが持つ功罪はあるだろう。それは別途語るとして、演奏会の成果と出演者の力量は凄まじいモノがあった。設立時とは隔世の感があった。ピアノ2名、トロンボーン、そしてヴァイオリンがコンチェルトを演奏。出演者が高校生であっても、聴衆を唸らせる世界を提示していたので、凄い世の中になったと私は思った。

 これからもっと実績を積んで、世界を席巻していくことになると思われる出演者たちだが、いまこの若き演奏家が表現する世界を全国の各地域の文化施設でも聴いていただきたいと思った。一握りの有名人も素晴らしいけれど、これからの音楽界が誇る若い演奏家の財産は遜色のないものなので、受賞者の世界を多くの人びとに共有していただきたいと思った。

 全曲オーケストラとのコンチェルトだったが、その演奏も素晴らしかった。角田鋼亮指揮・新日本フィルハーモニー交響楽団。司会は朝岡 聡。挨拶、場面転換のつなぎ、簡単な曲目解説、短時間に急所をついたスマートな表現は、多分この種の企画を担当されたら日本一だと思うくらいの耀きがあった。