私が文化会館の事業に従事させて頂け、全国の文化施設の助言などをさせて頂けた基は、クラシック音楽の普及にあったようです。バレエ、オペラも加え、なかなか大都市の施設に距離や時間、お金も掛かる演目は、文化施設の誰かが強力に働き掛けない限り鑑賞出来づらい企画だからです。誰もが気軽に鑑賞できる方法や出演者へのアプローチが出来る術を持ったひとが欲しかったようでした。
しかしそれは資金があれば、電話一本かければ何処でも誰でも実現可能な仕事なのです。演奏会チケットを売り捌くことに苦労する話では無いのです。
都道府県が参画する施設は、資金の額も違うので、オーケストラや子どもの団体の育成まで拡げているところもあります。しかし小都市では予算も人材も不足していて、地元の文化を育成するところまで手が届かないのが現状です。
文化施設は教育機関ではありません。しかし学校で学んだ文化芸術は、社会でも継続して拡げていくことが、町の文化的な財産を大きく産み育てて行くのだと思っています。
どんな町でも人財は隠れていても豊富なのです。文化施設はその人びととの発掘・交流が基礎になるはずなのですが、幾ら説明して、実践例を上げても、分かるひと、少しでも地場産業から何かを生み出そうと考えるひとが殆どいなかったことが私には驚きでした。
公立の文化施設は、特定の人びとによる邑社会の交流場所ではありません。地域文化の揺籠として自在な展開が大切なのですが、残念ながら実現例が少なかったようです。そこをやり残していますが、私が考え実践してきた文化施設のコンセプトは間違っていなかったと思っています。