「コスモス200」という電子音楽を創ったことがあった。それはNHKの放送技術と野辺山電波観測所のご協力で、 84年に NHKで製作し放送初演された。
 
 音源はホワイトノイズを切り貼りして組み合わせだけでした。シンセサイザーの鍵盤で創った音とはかなり違っている。音楽の内容は、星空を夕方から翌日の明け方までの12時間に固定した窓枠から見える星たちをそのママ音で一つ一つ再現し、満天の星が輝いた世界を表現したものでした。
 星には地球からの距離や星自体の温度などそれぞれに個性があり、その星たちのデータを数値化した資料から蘇らせたものでした。
 各星は自転で発するパルサーが異なり、近くの星は ブルルルル、とオートバイのような音になり、遠くの星はチコン チコン と間遠になり、様々な音が響き合っていました。

 80年代の後半から十年程、小学1年生の音楽の教科書(教育芸術社)に「星の音楽を聴いてみよう」という副教材として載っていました。それを教室でレコード鑑賞された子どもさんも極少ないけどいたはずです。もう社会に出て中堅の輝かしいお仕事をされている歳でしょう。その音楽を覚えていたら、その時の感想を聞いてみたいものです。

 原盤は NHKで、その保管はレコード会社に依頼しましたが、その後行方不明になってしまい、現在では幻の音源と言われています。唯一教科書に準拠したハイライト版の原盤が残っていて、それで原作の壮大な星たちの歌声の一部をかろうじて聴くことができるのです。